Babywearing Asahikawa

はじめてのベビーウェアリング「定義・文化・効果・姿勢・新生児までわかるガイド」

ベビーウェアリングとは?

「ベビーウェアリングとは何か?」「正しい姿勢や効果はあるの?」——そんな疑問を持つ方へ。このガイドでは、赤ちゃんとの抱っこやおんぶの基本から、世界的な背景、抱っこひもを使う際の安全チェック、そして新生児のサポートまでを詳しく解説します。

ベビーウェアリングとは、赤ちゃんとのより深い絆を育むために、世界中で古くから実践されてきた抱っこやおんぶの文化に、科学的な研究によってそのメリットが裏付けられた考え方です。
抱っこ紐の種類を問わない一方で、赤ちゃんの姿勢や発達の観点、そして親子の快適さなど、いくつか知っておくべきポイントがあります。

なぜ、今抱っこを学ぶ必要があるのか?正解は存在するのか?
あなたと赤ちゃんにとって心地よい抱っこを見つけるために、まずは“知ること”から始めてみませんか。

日本ではまだあまり知られていないベビーウェアリングですが、国際的にはその重要性が認識されています。たとえば、ベビーウェアリングコンサルタントへ相談する際、ヨーロッパでは一部で公的な保険の補助を受けられるケースがあります。また、アメリカの研究によると、虐待予防に繋がる愛着・絆形成にベビーウェアリングが効果的という結果が示されており、現代の育児に必要な要素として注目されています。

この記事では、ベビーウェアリングの基本的な知識から、その歴史、実践方法、そして親子にもたらす具体的なメリットについて詳しく解説していきます。
これからの時代に求められる「子育てしやすい社会」の実現に向けて、ベビーウェアリングがその一助となることを願っています。

ベビーウェアリングの定義

”Babywearing(ベビーウェアリング)とは、抱っこ紐やおんぶ紐を使って、抱く人の身体に赤ちゃんを密着させて抱っこやおんぶをすること”です。

重要なのは、「抱っこ紐やおんぶ紐を使うこと」ではなく、「赤ちゃんが安全かつ快適に、そして生理学的に適切な姿勢で抱っこされること」、そしてそれを通じて「親子の豊かなコミュニケーションと愛着形成を促すこと」です。

また、広い意味ではそうして日常的に抱っこやおんぶをする育児文化や概念全体を指すこともあります。
これは、抱くことで赤ちゃんの安全を確保し、親子が密接に触れ合い欲求に敏感に応えようとする、古くから受け継がれてきた育児の知恵です。

ベビーウェアリングの柱となる”文化”と”研究”

世界各地の文化的なベビーウェアリング

広義のベビーウェアリングは、人類の歴史と同じくらい古い育児文化です。 特定の地域や国に起源があるわけではなく、世界各地で独自に発展してきた伝統的な子育ての一形態として存在しています。

例えば、メキシコの「レボゾ」アフリカの「カンガ」のように布で赤ちゃんを身につける伝統、中国の「メイタイ」というおんぶ紐、そして日本の「へこ帯」「一本紐」「おんぶもっこ」など、地域によって形や素材は様々です。
学者の見解では、人類は50万年以上も前に、動物の皮や植物の繊維で即席の抱っこの道具を作っていた可能性を指摘しています。つまり、ベビーウェアリングは新しい概念ではなく、むしろ人類のDNAに刻まれているとも言えるほど、自然な育児方法と言えます。

このように文化の中で育児の知恵として継承されてきた抱っこやおんぶを、さらに科学的な視点で研究・体系化したものが、現代の「ベビーウェアリング」です。

ベビーウェアリング先進国の実践とエビデンス

ベビーウェアリングの研究・発展は欧米を中心に広がり、その中でも特にドイツとアメリカの取り組みは、世界的に大きな影響を与えています。

ドイツにおけるベビーウェアリング

ドイツは、1970年代以降ベビーウェアリングをコンセプトとした抱っこ紐開発ベビーウェアリングコンサルタント養成制度の先駆けとなりました。現在でも、多くの国のベビーウェアリング教育機関や抱っこ紐メーカーがドイツの影響を受けています。

さらに、ドイツでは早い段階から産科やNICU(新生児集中治療室)などの医療施設でベビーウェアリングが取り入れられ、医師や理学療法士との連携のもと、「正しい姿勢」や「発達支援としての抱っこ」の実践が進められています。

アメリカにおけるベビーウェアリング

一方アメリカでは1980年代半ば、小児科医のウィリアム・シアーズ博士が、自身の子育ての中で「babywearing(ベビーウェアリング)」という言葉を使い始め、その言葉や概念を広めました。彼は、愛着を重視した育児法を提唱し、赤ちゃんとの信頼関係を築く上で、ベビーウェアリングがもたらす多くのメリットに注目しました。

日本におけるベビーウェアリングの広がり

2016年以降、ドイツ発のベビーウェアリングコンサルタント養成カリキュラムが本格的に広まり、国際的な知見と技術を備えたコンサルタントが全国各地で活動しています。
かつて当たり前だったおんぶの習慣が次第に薄れ、抱っこやおんぶに悩む養育者が増えている現状から、子育て支援の中でこうした悩みを解決することの重要性が高まっています。

ベビーウェアリングの基本と姿勢

発達心理学や小児医学の進展に伴い、伝統的な子育ての知恵であったベビーウェアリングが、現代において再び注目されています。特に、アタッチメント(愛着)理論カンガルーケアといった概念が広まるにつれて、赤ちゃんと親の早期からの身体的な触れ合いが、赤ちゃんの脳の発達、情緒の安定、そして親子の愛着形成に深く関わることが、科学的に裏付けられました。これにより、ベビーウェアリングの有効性が広く認められています。

こうした研究の進展は、単に赤ちゃんを抱っこするだけでなく、「いかに安全に、そして赤ちゃんの身体発達に配慮しながら抱っこするか」という視点をもたらしました。その結果、様々なタイプのベビーキャリアが開発され、国際的な安全基準も設けられるようになりました

【国際的な安全基準 T.I.C.K.S.】

安全にベビーウェアリングを行うためには、いくつかの重要なポイントがあります。

国際的な安全基準として、赤ちゃんの安全を確保するための5つのチェックポイントの頭文字をとった「T.I.C.K.S.」が広く活用されています。

「T.I.C.K.S.」はイギリスの国家機関が推奨しているほか、ヨーロッパとアメリカの抱っこひも安全基準にも採用されています。

  • T (Tight: しっかり密着)
    赤ちゃんがぐらつかないよう、しっかりと密着させます。ゆるいと体勢が崩れやすく、落下の危険性があります。気道の確保にも背中全体のサポートが重要です。
  • I (In view at all times: 赤ちゃんの顔が常に見える)
    赤ちゃんが常に親の視界に入り、呼吸を確認できるようにします。布で顔が覆われたり、胸に顔が埋もれたりしないよう注意しましょう。
  • C (Close enough to kiss: キスできる高さ)
    赤ちゃんの頭にキスができる位置で抱っこしましょう。高い位置の抱っこは呼吸の確保や、大人の負担軽減にもつながります。
  • K (Keep chin off chest: あごを胸に押し付けない)
    赤ちゃんのあごが胸につかないよう注意しましょう。あごの下は、気道を確保できる指2本分のスペースをあけましょう。
  • S (Supported back: 背中をしっかり支える)
    赤ちゃんの背中が自然な『し』の字カーブで、しっかり支えられていることを確認します。体が丸まりすぎたり、逆にまっすぐになりすぎたりしないこと、さらにしっかり支えつつも赤ちゃんの自然な動きを妨げないことも重要です。
    姿勢を保つためには、膝をお腹に引き寄せるようにM字型開脚姿勢で、深く座らせることも重要です。発育性股関節形成不全(DDH: Developmental Dysplasia of the Hip)の予防にもつながります。
    ※背中のカーブは「Cカーブ」と表記されますが、実際の姿勢は「し」の字をイメージしてください。お腹の中で丸まっていた胎児も、生まれたあとは肺呼吸に適した緩やかなカーブが快適です。

日本語版|T.I.C.K.S.ポイントを含む
安全で快適な抱っこのガイド(無料ダウンロード可)
発行:一般社団法人 日本ベビーウェアリング協会(JaBA)

基本の姿勢と正しい装着による快適な抱っこ

上記のようなポイントを知ることで、安全が担保されることはもちろん、抱っこはより快適かつ、より豊かな時間となるでしょう。

1高い位置 2M字型開脚姿勢&背中のカーブ 3ぴったり密着 4手は顔の近く 5赤ちゃんの様子が見える

抱っこ紐やおんぶ紐は、製品ごとの特徴や正しい装着方法があります。取扱説明書をよく読み、不安な場合はベビーウェアリングの知識をもつ支援者や、より詳しい調整方法を教わることのできるベビーウェアリングコンサルタントへの相談をお勧めします。

抱っこ紐は、誰にでもこれが1番良いということがありません。それぞれの親子に合うものを選び、適切な使い方をすることが大切です。

ベビーウェアリングコンサルタントを探す

ベビーウェアリングアドバイザーリスト
抱っこ相談所リスト(一社 日本ベビーウェアリング協会主催)
コンサルタントリスト(Die Trageschule ドイツベビーウェアリングスクール修了者:アジア)
子育て支援者向け講座:ベビーウェアリング概論①②(一社 日本ベビーウェアリング協会主催)

抱っこは習得できる育児スキル

このように、抱っこはポイントやその方法さえ分かれば、誰でも確実に習得できる育児のスキルです。
泣いている赤ちゃんが「自分の抱っこで泣き止んだ」という経験は、赤ちゃんにとっての安心と、親にとっての自信を同時に育てることに繋がります。

誰でもできる抱っこをなぜ、学ぶのか?

抱っこは誰でも簡単にできる、と思われがちですが、実は多くの養育者が、妊娠中から産後にかけて抱っこやおんぶについて学ぶ機会をほとんど得られていないのが現状です。
その一方で、抱っこ紐の種類は非常に多く、「どれを選べばいいのか分からない」「正しく使えているのか不安」と感じる方も少なくありません。

抱っこ紐は、親子に合うものを適切に選び、正しく使用することで、双方に多くのメリットをもたらします。
もし、赤ちゃんの抱っこやおんぶに不安を感じて、ご自身の抱っこが赤ちゃんに合っているか確認したい場合は、月齢を問わずベビーウェアリングコンサルタントに相談することをおすすめします。正しい知識と実践方法を学ぶことで、より安全で快適なベビーウェアリングができるようになります。

コンサルタントから適切なアドバイスを受けることで、これまで以上に抱っこやおんぶが心地よくなったと感じられ、より快適なスキンシップから赤ちゃんと絆が深まることが研究でも明らかになっています。これからの時代は、ただ赤ちゃんを抱くだけでなく、より快適で心地よく、絆を深める抱っこが重視されていくのかもしれません。

新生児のベビーウェアリング

快適な抱っこは、赤ちゃんの月齢や発達段階に応じて、適切な抱っこ紐の種類や装着方法を選ぶことが基本です。その中でも、新生児期の赤ちゃんをベビーウェアリングしたい時は、抱っこ紐の選び方がとても重要になります。

新生児は縦抱きにするべきか

「首の座らない赤ちゃんは横抱きが良い」「まだ柔らかく小さな新生児を縦抱きにするのは不安」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、結論から言うと、新生児を縦抱きにすること自体は問題ありません。
エビデンスに基づくベビーウェアリングの考え方では、抱っこ紐を使用する際、生理学的な発達に沿った縦抱きが、新生児期に推奨される唯一の選択肢とされています。
一方で、素手で抱っこをする時には授乳やゲップ、それぞれに安定しやすい抱き方があるのはご存知の通りです。つまり、いつでも縦で抱っこしなければいけない、という事ではありません。また、いつから抱っこ紐が必要か?そのシーンやタイミングは、親子によってさまざまです。どの時期であっても、無理に抱っこ紐を使用する必要はなく、赤ちゃんと大人双方のニーズに合わせて柔軟に取り入れることが大切だと考えます。

新生児からのベビーウェアリングで得られること

適切な姿勢で正しく抱っこ紐を使用すれば、新生児期や首すわり前からのベビーウェアリングは親子双方にとって多くのメリットがあります。

赤ちゃんへのメリット

安心感と情緒の安定:親の心臓の音や体温を常に感じられ、お腹の中にいた時と似た環境で、赤ちゃんは安心して、泣き止みやすくなります。
呼吸のしやすさ:正しい縦抱きは、気道が確保されやすく、呼吸がスムーズになります。
発達の促進:スキンシップ効果。親と動きを共にすることで、バランス感覚が養われ、前庭系(平衡感覚を司る器官)の発達を促します。2ヶ月頃から視覚の刺激による効果も。
消化器系 : 縦抱きの姿勢は、ゲップを出しやすく、吐き戻しを軽減する効果が期待できます。

親へのメリット

抱っこ負担の軽減: 正しく抱っこ紐を使えば、手や腕だけで抱っこするよりも身体への負担が少なく、抱っこを長時間必要とする赤ちゃんのお世話も楽になります。
愛着形成の促進: 密着することでオキシトシン(愛情ホルモン)が分泌されやすくなり、親子の絆が深まります。
自由度の向上: 両手が空くことで、家事や他の子どもの世話などがしやすくなり、育児中の行動範囲が広がります。
母乳育児のサポート: 母親がベビーウェアリングを始める時期は、産後の回復や体力、またその必要性によって個人差があります。ベビーウェアリングで赤ちゃんとお母さんが密着する時間が増えることで、母乳育児がよりスムーズに進むことが多く報告されています。このため、ベビーウェアリングは母乳育児の環境づくりを助ける有効な手段と言えます。

新生児のベビーウェアリングの注意点

もしも新生児をベビーウェアリングしたい時は、以下の点に注意しましょう。基本的な安全基準であるT.I.C.K.S.を守ることに加え、様々な機能が未発達な新生児特有の配慮が必要です。

赤ちゃんの生理的発達に合わせた抱き方

首が座る前の赤ちゃんは、首のコントロールを学習する段階にあります。
赤ちゃんは頭部が重く、骨格や筋力が未熟のため、床の上であっても重力に逆らって自分の身体をコントロールしバランスをとるのが難しいです。縦抱きにする際は、新生児特有の姿勢をそのまま抱っこ紐の背当て布と大人の胸でサポートします。そうすることで、赤ちゃんは平らな床で寝かされている時よりも姿勢が安定します。

この時期には、「赤ちゃんの頭と首、背中がしっかりと支えられており、かつ呼吸が楽で自然な動きができる状態」が望ましいとされています。

赤ちゃんの身体を隙間なくぴったり支えて、大人の胸に寄り添うように抱っこをします。抱っこ紐の種類によって首や頭部のサポート形状は様々ですが、首の湾曲に合わせたネックサポートがあると頭部が安定し、赤ちゃん自身の自然な動きを妨げることもありません。

新生児の抱っこ紐の選び方と姿勢のサポート

正しい姿勢で縦抱きにすることで、新生児と親の双方に多くのメリットがあります。親子の体格に合った抱っこ紐を選び、適切な姿勢をサポートしましょう。

  • 新生児の自然な姿勢を妨げない
  • 頭部と頸部の適切なサポートにより、頭部を安定させる
  • 小さな身体に完全にフィットする抱っこ紐を選ぶ
  • 頭部を布等で覆わず、様子が確認できる
  • T.I.C.K.Sが全てクリアされている

上の写真の新生児抱っこは、全てベビーラップを使用しています。ベビーラップは抱っこのために開発された一枚布で、小さな赤ちゃんの体格にしなやかにフィットすること、長い布で様々な巻き方ができることから、赤ちゃんを適切な姿勢で安定して抱くことに適しており、新生児の抱っこにはベストと言える選択肢です。

ただし、スリングやキャリアタイプの抱っこ紐も、身体にフィットし安定した抱っこができれば赤ちゃんは同じように落ち着きます。

首すわり前の赤ちゃんを抱っこしやすい、ストレッチ素材の抱っこ紐もあります。これらは生後1ヶ月頃〜の赤ちゃんのために設計されています。首すわり前からの抱っこ紐選びにも、このように様々な選択肢があります。

不安があれば専門家へ相談を

自分と赤ちゃんにとって心地よく、快適な抱っこ紐を見つけるには、試着をしながらじっくり選ぶことが大切です。新生児のベビーウェアリングを生活に取り入れたい時は、ベビーウェアリングコンサルタントのサポートがあれば安心です。

抱っこ紐使用時の事故や、ひやりハットは、使い初めて間もない時期や低月齢の赤ちゃんの抱っこで頻度が高くなっています。試着をしながら、適切で安全な抱っこ紐の使い方のアドバイスを受けることで、安心して抱っこ紐デビューができるはずです。

ベビーウェアリングのベネフィット

ベビーウェアリングは、赤ちゃんにも親にも、心身の健康と発達に良い影響を与えます。

赤ちゃんへの効果

  • 安心感と情緒の安定: 親の心音や体温、匂いを常に感じることで、赤ちゃんは安心感を得て、泣き止みやすく、ストレスが軽減されます。これは、お腹の中にいた頃の環境に似ているため、特に新生児期に大きな効果を発揮します。特に低出生体重児や、分離不安を抱えやすい赤ちゃんにとって重要であるという研究もあります。
  • 発育・発達の促進: 親の動きに合わせて揺れることで、バランス感覚が養われ、前庭系(平衡感覚を司る器官)の発達を促します。また、親と同じ目線で世界を見ることで、視覚や聴覚からの刺激が増え、認知発達や社会性の発達にも良い影響を与えます。正しい姿勢で抱かれることで、股関節の発達を助けるとも言われています。
  • アタッチメント(愛着)形成の促進: 親子の物理的な密着は、アイコンタクトや肌の触れ合いを促し、相互作用を深めます。これにより、親子の強い愛着関係の形成が促進されます。
  • 睡眠の質の向上: 親の揺れや温かさは、赤ちゃんを落ち着かせ、睡眠の質が向上させる効果があります。
  • 消化の促進とコリック軽減: 縦抱きにすることで、赤ちゃんの消化を促進します。胃の空気抜きを助け、吐き戻しを軽減する効果やお腹の不快感によるコリックを軽減されることがあります。

親への効果

  • 自由度の向上と負担軽減: 両手が空くため、家事や他の子どもの世話、外出などがしやすくなります。ベビーカーが使えない場所での移動も容易になり、親の行動範囲やできることの幅が広がります。また、抱っこによる身体的な負担も軽減されます。
  • 赤ちゃんのサインの察知 赤ちゃんが常にそばにいることで、赤ちゃんのニーズにすぐに気づき、応えることができます。これにより、赤ちゃんの泣き止むまでの時間が短縮されたり、育児に対する不安やストレスが軽減されたりする効果が期待できます。
  • 親子の絆の深化: 赤ちゃんとの密着は、オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌を促し、親の幸福感を高め、育児への自信につながります。産後うつのリスク軽減にも寄与すると言われています。

父親支援・家族支援としてのベビーウェアリング

近年、子育てにおける父親の役割の重要性がますます認識されています。
しかし、赤ちゃんが産まれたばかりの父親は「具体的にどう関わればよいかわからない」「自分は母親と比べてスキルがないのでは」と悩むケースも少なくありません。そんな父親たちにとって、ベビーウェアリングは非常に有効な方法となり得ます。

ベビーウェアリングは、比較的誰にでも実践しやすい育児スキルのひとつです。ベビーウェアリングなら、父親が早期から赤ちゃんとの絆を深めることができます。
親の温もりや心臓の音を直接感じながら過ごす時間は、赤ちゃんの安心感を育み、父親自身も「自分は赤ちゃんを安心させられる存在だ」という実感を得やすいでしょう。この早期からの密接な触れ合いは、父親と赤ちゃんの間に強固な愛着関係を築く上で極めて重要な要素となるはずです。
母親の負担を軽減することにも協力できますし、父親自身の成長、そして家族全体の幸福度向上にも少なからず貢献すると考えます。

これから親になる方、あるいは子育て中の父親が「もっと育児に関わりたい」と感じた時、ベビーウェアリングは力強い味方となるでしょう。

セラピーとしてのベビーウェアリング

ベビーウェアリングは、単なる移動手段や育児の便利ツールに留まりません。密着した抱っこやおんぶは、特定の状況下にある親子にとって、心理的・身体的な「セラピー」としての効果を発揮することが、多くの研究や実践によって示されています。

災害時におけるストレス軽減と安心感

災害や避難といった状況下では、大人も子どもも大きなストレスに晒されます。

  • 子どもの安心感の回復: 見慣れない環境や混乱の中で、親の体に密着することで、赤ちゃんや子どもは安心感を得やすくなります。ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を抑え、精神的な安定を促す効果が期待できます。
  • 親のストレス軽減と対応力向上: 常に子どもがそばにいることで、親は子どもの状態をすぐに把握でき、迅速に対応できます。両手が空くことで、避難場所での作業や移動もスムーズに行えるため、限られた状況下でも育児への自信を保ちやすくなります。

日頃からベビーウェアリングをしていると、いざという時にもさっと抱っこおんぶすることができます。避難時や避難所での生活、避難後まで、さまざまな場面で安全性の高い抱っこやおんぶが役に立つことから、ベビーウェアリングは防災対策に有効と考えられます。

大きな子や上の子との関係性

「ベビーウェアリングは赤ちゃんだけ」と思われがちですが、実は歩けるようになった大きな子や、下の子が生まれた上の子との関係性にも良い影響を与えます。

  • 大きな子の甘えと自立のバランス: 歩けるようになっても、時に親に抱っこを求めることがあります。疲れた時や情緒が不安定な時に抱っこやおんぶをすることは、子どもの欲求や心を満たします。これは、子どもが安心して自立していくための基盤となります。
  • 上の子の感情的サポート: 下の子が生まれた際、上の子が「自分も抱っこされたい」「ママを取られた」と感じることがあります。そんな時にベビーウェアリングすることは、不安を和らげ、愛情を再確認する機会となります。特に「おんぶ」は、二人の子供たちとのスキンシップを可能にする有効な手段です。上の子の安心感が高まることで、きょうだい間の健全な関係構築にもつながります。

医療的ケア児とその養育者への支援

医療的ケアが必要な子どもたちとその養育者にとって、ベビーウェアリングは特別な意味を持ちます。医療従事者のチームに専門知識をもつベビーウェアリングコンサルタントが加わり、個別の子どもに合わせた抱っこ・おんぶの方法をチームで検討することでその可能性は広がります。

  • 安心感と安定した姿勢: 呼吸器やチューブなどの医療機器がある場合でも、工夫次第で安全にベビーウェアリングができるケースがあります。医療的ケア児は、身体の緊張が高い、体幹が不安定といった特性を持つことがありますが、親の体に密着することで身体が安定し、安心感を得やすくなります。これは、過度な緊張の緩和や呼吸の安定に寄与する可能性があります。
  • 社会参加と生活の質の向上: 医療機器を装着していると、外出や移動に制限がある場合も少なくありません。ベビーウェアリングなら、親が子どもと共に安全に移動できるため、散歩や買い物、きょうだいの学校行事など、様々な社会活動への参加を可能にします。これにより、養育者の孤立感を軽減し、親子ともに生活の質(QOL)を高めることにつながります。

発達支援としてのベビーウェアリング

ベビーウェアリングは、子どもの発達全般に対してポジティブな影響をもたらすことが、多くの研究で示され実践が広がりつつあります。

  • 感覚統合の促進: 親の動きに合わせて揺れ、様々な環境に触れることは、子どもの前庭覚(平衡感覚)や固有受容覚(体の位置感覚)といった感覚統合を促します。これは、運動能力の発達や、外界への適応力を高める上で重要です。
  • 認知・言語発達の促進: 親と同じ目線で世界を見ることで、視覚や聴覚から得る刺激が増え、周囲への興味関心が高まります。親との自然な会話や表情のやり取りも増え、認知能力や言語発達の促進にも繋がります。
  • 情緒的発達と愛着形成: 肌と肌の触れ合いは、オキシトシンの分泌を促し、親子の愛着形成を深めます。安定した愛着関係は、子どもの情緒を安定させ、自己肯定感や社会性を育む土台となります。特に、発達に課題を抱える子どもたちにとって、この安定した関係性は、その後の成長に大きな影響を与えます。

ベビーウェアリングをされている赤ちゃんは”揺れ”や、大人の身体の”動き”から、バランス感覚や身体の使い方を学習しています。

ベビーウェアリングを発達支援に取り入れようとする際には「しっかりと支えること」と「赤ちゃんが自然に動ける余地を残すこと」の両立が非常に大切です。この点は、国際的な安全ガイドライン(T.I.C.K.S.)での呼吸コントロールや発達研究においても一致しています。
赤ちゃんは、抱っこ紐の中でも発達は止まることはありません。発達段階に応じて適切に支えられながら、自らの動きを学ぶ過程にあると理解することが大切です。自然なリラックス姿勢がとれること、発達段階に応じて、身体を回したり反り返る運動をしても不安定にならないしっかりとした支えがあることで、
歩けるようになる前の赤ちゃんは、大人と一緒に見たことのない世界に触れ、お互いの動きや言葉から相互に影響を受けながら絆を深め、身体全体で様々なことを学習します。

発達支援としてのベビーウェアリングは、発達段階に応じた抱き方の検討や適切な姿勢保持の細やかなアドバイスが重要です。医療従事者と専門知識をもつベビーウェアリングコンサルタントの連携が欠かせません。

ベビーウェアリングによるセラピー効果

ベビーウェアリングは、さまざまな背景をもつ親子への心理的・身体的サポートの有効性や可能性を持っています。これは、親子の絆を深め、子どもたちの健やかな成長を促すだけでなく、養育者自身のウェルビーイングを高めるために、非常に有効な手段と言えるでしょう。

このようなベビーウェアリングの効果が、より多くの親子に届くことの重要性を強く感じています。そのためには、ベビーウェアリングコンサルタントの存在が必要不可欠です。

ベビーウェアリングコンサルタントとは?

ベビーウェアリングコンサルタントは、ベビーウェアリングに関する専門知識とスキルを持ち、養育者に適切な情報提供とサポートを行う専門家です。世界的には「認定ベビーウェアリングコンサルタント」や「エデュケーター」といった資格があります。

コンサルタントの役割

ベビーウェアリングコンサルタントの主な役割は、抱っこ紐選びのポイントや、安全かつ快適な装着方法について、各家庭の状況に応じたサポートを行うことです。

赤ちゃんの月齢・体重・発達段階に加え、保護者の体格や生活スタイル、抱っこ紐の種類(スリング、ラップ、バックルタイプのキャリアなど)に応じて、最適な抱き方や調整方法を提案します。また、ベビーウェアリングのメリットや注意点についても、個別のニーズに合わせたアドバイスを提供します。

さらに、双子や早産児、発達に課題のある赤ちゃんなど、特別なニーズを持つご家庭にも対応できるコンサルタントもおり、より幅広い支援が可能です。

具体的には、以下のようなサポートを行います。

  • ベビーウェアリング用品の選び方のアドバイス
    スリング、ラップ、ベビーキャリアなど、多種多様なベビーウェアリング用品の中から、その家庭に合ったものを選び、試着をサポートします。
  • 安全で適切な装着方法のサポート
    T.I.C.K.S.ルールに基づき、赤ちゃんが安全かつ快適に過ごせるよう、また親の体への負担が少ない装着方法を丁寧に指導します。装着練習の際には実際に赤ちゃん人形などを使ってサポートし、養育者が自信を持って安全にベビーウェアリングできるよう手助けします。
  • 姿勢や身体の使い方のアドバイス
    赤ちゃんの股関節の発達や脊椎のカーブなど、生理学的な観点から適切な抱っこ・おんぶの姿勢のアドバイスや、抱っこする側の親の姿勢や抱き方についてもアドバイスし、肩こりや腰痛の予防をサポートします。
  • トラブルシューティング
    赤ちゃんが嫌がる、うまく装着できない、痛みがあるなどの問題に対し、具体的な解決策を提案します。
  • 正しい情報提供
    最新の研究や安全情報を提供し、誤解や誤った情報が広まらないように努めています。

他職種連携の必要性

ベビーウェアリングは、医療、育児、発達など様々な分野と密接に関わっているため、専門分野との連携が非常に重要です。そのため、ベビーウェアリングコンサルタントは、助産師・保健師、理学療法士・作業療法士、小児科医、心理士、産前産後ドゥーラ、保育士・シッターなど多職種との連携することで、より包括的なサポートを提供することができます。

ベビーウェアリングを当たり前の社会に

多様化する子育ての選択肢として

現代の子育ては、核家族化、共働き世帯の増加、地域のつながりの希薄化など、様々な変化に直面しています。その中で、親が抱え込む負担は増大しやすくなっています。ベビーウェアリングは、このような多様化する子育て環境において、親が赤ちゃんとの絆を深めながら、より柔軟に、そして安心して子育てを行うためのひとつの選択肢となり得ます。

ベビーウェアリングは、決して「こうでなければならない」という押し付けではありません。さまざまな育児方法や用品はそれぞれにメリットがあり、親子がライフスタイルや状況に合わせて自由に選択できることが重要です。その選択肢の一つとして、ベビーウェアリングが当たり前に存在し、正しい情報に誰でもアクセス可能となることを願っています。

親子の絆を深めるベビーウェアリング

旭川抱っことおんぶの相談では「Hug×Smile×Care」という3つのコンセプトを大切にしています。
Hug: 抱きしめる喜び、そして抱きしめられる安心感。
Smile: 笑顔で見つめ合う、心温まる瞬間。
Care: 赤ちゃんも親も、他者からケアされる必要のある大切な存在であること。という意味を込めました。

また、コンサルタントとして最も大切にしているのは、日本においてベビーウェアリングに関する適切な情報がエビデンスに基づき、かつフラットな形で広まることです。
ベビーウェアリングは多様な側面があり、その本質や具体的な実践方法が伝わりにくいこともありますが、一人ひとりの親子に寄り添いながらサポートすることで、親御さんが抱っこやおんぶに自信を持ち、育児がもっと楽しく、幸せな時間になるようお手伝いをしたいと考えています。

さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が「ベビーウェアリングとは何か」を知るきっかけとなり、あなたの育児が少しでも豊かなものとなれば幸いです。もしベビーウェアリングや本記事の内容にご興味があれば、いつでもご相談ください。

DIDYMOS ベビーウェアリングアドバイザーナショナルトレーナー 
Die Trageschule AC/MC 修了
一般社団法人 日本ベビーウェアリング協会理事 
2025.7.19  松澤 美沙

参考・出典

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Child use and care articles – Baby carriers – Safety requirements and test methods

「ヒヤリハットアンケート2024」/だっこ紐安全協議会

NCT (National Childbirth Trust). (n.d.). Baby slings and carriers: a guide. https://www.nct.org.uk/information/baby-toddler/caring-for-your-baby-or-toddler/baby-slings-and-carriers-guide /英国スリング安全ガイドライン(T.I.C.K.S)

Queensland Government「The TICKS rule for baby sling safety: Tight · In view at all times · Close enough to kiss · Keep chin off chest · Supported back/オーストラリア・クイーンズランド州政府によるスリング安全チェック指針」

Beloved Burden: Baby Carriers in Different Countries 2009/tie van Hout/世界各国のベビーキャリアの文化的背景を写真と共に紹介する書籍

Hrdy, S. B. (1999). Mother Nature: Maternal Instincts and How They Shape the Human Species. Ballantine Books./母性行動と進化的背景

Taylor, T. (2010). The Artificial Ape: How Technology Changed the Course of Human Evolution. Palgrave Macmillan./道具の発達と人類進化の関係

Attachment Parenting Book Dr. William Sears/アタッチメント・ペアレンティングの理論と実践方法

World Health Organization. (2009) /新生児ケアガイドライン

ベビーウェアリング関連講座

日本ベビーウェアリング協会主催 ベビーウェアリング概論講座(支援者向けベビーウェアリング講座)
DIDYMOS ベビーウェアリングアドバイザー養成講座(ベビーウェアリングコンサルタント養成)

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